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新型コロナウィルス感染症の罹患後症状についてSymptoms after the coronavirus

 2023年5月に高知県鍼灸マッサージ師会の研修会資料としてまとめたものをこちらにも掲載しておきます。

新型コロナウィルス感染症の罹患後症状について

一般社団法人高知県鍼灸マッサージ師会 会長  林 道夫

2023年5月14日

コロナウィルス完成小の種類

  1. 風邪のコロナウィルス
  2. 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)
  3. 中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)
  4. 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)

風邪のコロナウィルス

  • 日常的にヒトに感染するコロナウィルスは4種類
  • 流行期の冬風邪の3割はコロナウィルスが原因
  • ほとんどの子供が6歳までに感染し、生涯に何度も感染するが、軽い症状しか引き起こさないためあまり問題にはならない。

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)

  • コウモリのコロナウイルスがヒトに感染して重症肺炎を引き起こすようになったと考えられている。
  • 2002年に中国広東省で発生。
  • WHOの報告では、2003年12月時点の患者数は8,069人、うち775人が重症の肺炎で死亡(致命率9.6%)。

中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)

  • ヒトコブラクダに風邪症状を引き起こすウイルスだが、ヒトに感染すると重症肺炎を引き起こすと考えられている。
  • 2012年にサウジアラビアで発見。
  • WHOの報告では、2019年11月30日時点の感染者数2,494人、うち858人が死亡(致命率34.4%)。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)

  • 2019年に中国武漢市で発見。
  • コウモリのコロナウイルスを祖先にもつと考えられるが、センザンコウのコロナウィルスと遺伝子組み換えを起こした可能性が考えられる。
  • WHOの報告では、2023年5月3日時点の感染者数7億6500万人、うち690万人が死亡(致命率0.9%)。

コロナウィルスの感染者数と死亡率の比較

コロナウィルスの種類による比較

《WHOの報告値》
種類 感染者数 死亡者数 致命率
SARS-CoV 8,069人 775人 9.6%
MERS-CoV 2,494人 858人 34.4%
新型コロナ 765,000,000人 6,900,000人 0.9%

日本と高知県の新型コロナウィルス感染症の状況

《厚生労働省の公表値》(2023/05/05時点)
  要請者数 死亡者数 致命率
日本 33,778,993人 74,645人 0.22%
高知県 170,143人 602人 0.35%

新型コロナウィルス感染症の特徴

  • SARSやMERSとは伝播性と病原性において明らかに異なる。
  • 重症化リスクは、高齢者や基礎疾患を持つ人、肥満などの要因がある人、免疫機能が低下している人に高いとされている。
  • 健康な人での重症例や死亡例も稀にではあるが確認されている。
  • 子供への感染も頻繁に確認されるが、軽症もしくは不顕性であり、子供を介した高齢者への伝播が問題視されている。

新型コロナウィルスの感染と発症のメカニズム

感染のメカニズム

  • コロナウイルスは、直径約100nmの球形で表面には突起のようなスパイクタンパク質が見られる。
  • (形態が王冠に似ていることからギリシャ語で王冠を意味する“corona”という名前が付けられた。)
  • スパイクタンパク質が、人間の細胞表面にあるACE2受容体に結合することで、細胞内に侵入する。
  • ACE2受容体は、鼻や口の粘膜のほか、肺や脳、心臓、小腸などあらゆる臓器に存在するため、症状も全身に現れる。
  • (特に肺や心臓、腎臓などの臓器に多く存在することから、呼吸器症状や心臓症状、腎臓症状が起こりやすいとみられている。)

発症のメカニズム

ウイルスが細胞内に侵入すると…

  1. ウィルスの複製が始まり細胞そのものが破壊される。
  2. 破壊された細胞などにより血栓が作られ循環が悪くなる。
  3. 炎症を起こした部位からサイトカインという炎症性物質が血液中に放出され、さまざまな臓器に影響を及ぼす。 ※ これらの症状が重症だったり長引いたりした時に、後遺症が現れると考えられる。

新型コロナウィルス感染症の罹患後症状

後遺症とは

  • 病気やけがをしたとき、機能や形態がもとにもどらないで治った場合、その機能や形態の異常のことをいう。
  • (脳卒中での半身麻痺など。)
  • また、事故などのあと、しばらくたってから現われる障害をもいう。

罹患後症状の定義

WHO(世界保健機構)の定義

 新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないものである。

新型コロナウィルス感染症の罹患後症状

代表的な罹患後症状

分類 症状
呼吸器症状 咳、喀痰、息切れ、胸痛
全身症状 疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、筋力低下
精神・神経症状 記憶障害、集中力低下、睡眠障害、頭痛、抑うつ
その他 嗅覚・味覚障害、動悸、下痢、腹痛、脱毛など

※ さらに、感染時と同じ症状が長く続く場合と、いったん症状が改善した後に症状が現れる場合の両方がある。

罹患後症状の症状別発症割合

症状 発症割合
倦怠感 40%
息切れ 36%
嗅覚障害 24%
不安 22%
17%
味覚障害 16%
抑うつ 15%

罹患後症状の機序

「新型コロナウイルス感染症診療の手引き・罹患後症状のマネジメント・第2.0版」より

  • ウイルスに感染した組織(特に肺)への直接的な障害
  • 微量なウイルスによる持続感染
  • ウイルス感染後の免疫調節不全による炎症の進行
  • ウイルスによる血液凝固能亢進と血栓症による血管損傷・虚血
  • ウイルス感染によるレニン・アンジオテンシン系(副腎ホルモン)の調節不全

※ 単一の病態ではなく、これらのいくつかが複合的に絡み合ったものが罹患後症状として現れている症例もあると考えられる。

機序に関する主要な仮説

分類 補足
①過剰な免疫反応によるものであるという仮説  ウイルスに感染した場合に、体が過剰な免疫反応を起こして、自身の細胞を攻撃することが原因で起こる可能性がある。
②血管障害に関連する仮説  COVID-19は血管を攻撃し、血管を炎症反応にさらすことで、細胞死や臓器障害を引き起こす可能性がある。
③ 神経症状に関連する仮説  COVID-19は、神経系を直接攻撃することがあり、神経症状が後遺症として残る可能性がある。

最近のニュース記事

新型コロナ “脳で免疫の働きする神経細胞に感染” 慶応大など (NHKニュース 2023年4月18日)

罹患後症状の発生頻度

頻度についての海外での45の報告(計9,751例)の系統的レビュー

  • 現時点では、後遺症の発生率に関する正確な統計データはまだ不明。
  • 退院/回復後1ヵ月を経過した患者では72.5%が何らかの症状を訴えていた。
  • 退院後6ヵ月以上で何らかの症状を有するのは54%と報告されている。
  • 罹患後症状の発症割合は、個人の状態や病気の重症度によって異なる。

子どものコロナ後遺症3.9% 発症1カ月以上、小児科学会調査

子どものコロナ後遺症3.9% 発症1カ月以上、小児科学会調査 (共同通信 5月1日)

関連ニュース記事

コロナ感染後 元気な小学生に異変が… (NHKニュース 2023年4月27日)

罹患後症状への治療

厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症 罹患後症状のマネジメント」

《目次》

* 呼吸器症状へのアプローチ * 循環器症状へのアプローチ * 嗅覚・味覚症状へのアプローチ * 神経症状へのアプローチ * 精神症状へのアプローチ * “痛み”へのアプローチ * 皮膚症状へのアプローチ * 小児へのアプローチ * 罹患後症状に対するリハビリテーション * 罹患後症状と産業医学的アプローチ

罹患後症状を訴える患者への対応

  • 症状のつらさだけではなく、社会生活ができないことに対する焦りやせつなさを感じている方も少なからずいる。
  • 後遺症になると、治るまでに非常に時間がかかるということも本人のみならず家族や職場、学校などにも十分理解してもらう。
  • 先の見えない状態は患者にとってつらく心配なこと。一生治らないのかと心配している人が多いので、診察の際はまず「時間はかかるが、必ず良くなる」と声をかけ安心してもらうよう心がける。
  • 罹患後症状に不安のある患者には、かかりつけ医や行政の設置している窓口への相談を勧める。

参考サイト

○高知県庁「新型コロナウイルス感染症罹患後症状(いわゆる後遺症)について」

厚生労働省: 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A

長引くコロナ禍による二次的な症状

  • 長期間のマスク着用により、マスクと肌が密着、摩擦、蒸れやすくなり、肌トラブルが増加
  • マスク着用により、口呼吸になり口の中が乾燥しやすくなる。口の中が乾燥すると、口臭や歯周病の原因にもなる。
  • 対面コミュニケーションの減少や社会的孤立感により、うつ病や不安神経症などの精神疾患を発症するリスクが高くなる。
  • マスクを着用することで、頭や首の筋肉に負担がかかり、肩こりや頭痛を引き起こすことがある。また、マスクの着用で表情筋が動かなくなり、表情が乏しくなることもあります。
  • コロナ禍による外出自粛や施設の閉鎖などにより、運動不足になる人が増え、肥満や生活習慣病のリスクが高まる可能性がある。
  • コロナ禍で医療機関の混雑や診療制限が起こり、定期健診や治療が遅れ、疾患が進行し、重篤化する可能性がある。

参考記事

■がく関節症 コロナ禍で増加か (CBCテレビ 4月16日)