陰陽論は世の森羅万象を「陰」と「陽」に分けて把握し認識しようとするもので、五行論は同じく全ての事象を木、火、土、金、水の5つの要素に分類して認識しようとするものです。
陰陽論は陰陽それぞれが持つ「陰(-)」と「陽(+)」のイメージから、陰気な人や陽気な性格などと日常的な表現としてもよく使われています。
また陰=水、陽=火であることから、それぞれの訓読み「水=み」「火=ひ」が転じて「水極=みぎ」「火足り=ひだり」の語源であるという説もあります。
そして五行論では方角、季節、人体、音、色などありとあらゆるものを拡大し、複雑に捉え分類しています。
これらは東洋医学の根底となる考え方で、この2つの思想に基づき病気の診断や治療方針の選択をしていますが、実はこの思想は我々の日常生活の中にも潜んでいます。
例えば「味」は五味と呼び、酸、苦、甘、辛、鹹(塩味)が対応。それぞれの味の過不足が健康に影響すると考えます。
情緒が乱れているときは酸味と関係が深く、柑橘類を食べると気の巡りを助け、苦みは「火」に属し熱を冷ます効果があるため、夏にゴーヤーなどの苦みのあるものを食べるのは昔からの知恵といえるでしょう。
また年4回訪れる土用の丑の「土用」は、季節の変わり目のため体調を崩しやすいため「土」に属す甘み(高カロリー)の摂取で乗り切るのが良いとされています。
さらに辛みは「金」に属し、人体では肺に関与します。風邪をひいた時に辛みのある生姜を用いるのもこの五行論に基づいた処方です。
そして最後の塩味は「水」に属しますが、年齢を重ねると「水」の気が不足してくると考えるため、塩味に属する海産物を食べて補うと良いとされています。
このように陰陽論も五行論もバランスを最も重視します。取り過ぎてはいけません。何事もほどほどにというのが古来の一番の知恵なのかもしれません。