難病・炎症性腸疾患、知るところから 5月19日は「理解する日」)

毎日新聞 (2023/05/19

 原因不明の難病の炎症性腸疾患(IBD)を知ってもらおうと、「IBDを理解する日」(5月19日)に合わせ、小倉北区の小倉城が18日夜、IBDのシンボルカラーの紫色にライトアップされた。企画した「九州IBDフォーラム 福岡IBD友の会」の山田貴代加・事務局長(53)=八幡西区=は「まずは病名を知ってもらうきっかけにしてほしい」と願う。

◇「説明しないと生活しづらい」

 山田さんは10歳で発症したが、2年間は原因が分からず、12歳でIBDの一つであるクローン病と診断された。診断翌日から食べ物や飲み物を一切口にせず、1カ月半に及ぶ栄養剤の点滴治療の末に症状が治まったという。
 ただ、IBDには根本的な治療法がなく、就職や結婚、出産を経験する間にも改善と悪化を繰り返してきた。現在は治療薬の効果で普通の生活を送れているが、看護師として働いていた時は自ら点滴を打ち、夜勤は免除してもらうなど「病気と折り合いをつけながらやってきた」と振り返る。
 障害者差別解消法は、不当な差別の禁止と、負担が重すぎない範囲で障害者の求めに応じる「合理的配慮」を、行政と民間事業者に義務づけている。だが、山田さんは「大企業を除いてまだ浸透しきれていない。身近な人には自分で説明しないと、生活しづらいこともある」と話す。
 現在は治療薬の進歩で症状をある程度抑えることができるが、逆に仮病などと誤解されることもあるという。
 一方、社会全体でIBDへの理解を深めようとする動きも出ている。製薬会社「アッヴィ」(東京)は2022年から「I know IBDプロジェクト」に取り組んでいる。外出時のトイレの不安を解消するために、トイレの貸し出しに協力する企業や店舗を募集。8日時点で全国の75社2224店舗が賛同している。
 プロジェクト2年目となる23年は、新型コロナウイルスの5類引き下げなどで旅行の需要も回復していることから、観光地や商店街、地方自治体にも賛同を呼び掛けている。

 ◇炎症性腸疾患(IBD)

 大腸や小腸の粘膜に炎症や潰瘍を引き起こす原因不明の病気の総称。主に大腸の粘膜がただれる「潰瘍性大腸炎」と、消化管全域に炎症が起きる「クローン病」に分類される。厚生労働省の調査(2018年)によると、患者数は潰瘍性大腸炎が22万人以上、クローン病が7万人以上とされ、10~20代での発症が多い。