痛くない鍼はある? 皮膚表面を刺激して効果を出す“刺さない鍼”)

日刊ゲンダイDIGITAL (2023/08/09

 鍼は痛いというイメージをお持ちの方は多いと思いますが、実はまったく痛くない鍼というものもあります。
 なぜ痛くないか? それは接触鍼といって、皮膚表面を刺激して効果を出す、“刺さない鍼”だからです。
「刺さなくても効果があるのですか?」と患者さんによく聞かれます。しかし、実はすごい効果があるのです。
 皮膚は「露出した脳」ともいわれ、最近では脳だけでなく心にも極めて大きな影響を与えるという研究結果が出ています。
 東洋医学の考えでも、皮膚をなでたりこすったりして全身にあるツボを刺激することで、脳や内臓に働きかけ、心と体の健康を維持できるとされています。
 とても軽い刺激ですから小さなお子さんにも使うことができ、そのやり方のひとつに「スキンタッチ」という方法があります。お子さんの健康管理・健康増進を目的に古くから行われている「小児はり」を現代風にアレンジしたもので、鍼を使わずにご家庭にあるスプーンやドライヤー、歯ブラシといった生活道具を用いて刺激をするものです。
 やり方は、スプーンの背の部分でお子さんの素肌をスリスリ優しくなでたり、ドライヤーの風でポカポカ温めたり、または歯ブラシでトントン軽く叩いて、スキンシップを取りながら心地よく刺激していきます。
 実際こんな簡単なやり方でも、おねしょや疳の虫、夜泣きなどに効果があり小さいお子さんだけでなく、大人がやっても気持ちがいいものです。またつまようじを数十本束ねたもので頭皮をトントン刺激すると頭皮の血行が良くなり、薄毛対策に効果的です。
 刺さない鍼は他にも、シールに小さな鍼がついた貼るタイプの「円皮鍼(シール鍼とも呼ばれます)」などがあります。円皮鍼は貼ったまま運動ができるため、パフォーマンス向上やケガの予防に用いられます。フィギュアスケート選手やマラソン選手など、スポーツの現場で用いられていますので、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。こちらは薬局などで購入することもできます。
 専門的な道具がなくても鍼はできる。ご家庭でお手軽に試してみてはいかがでしょう?

柳知佳 日本医学柔整鍼灸専門学校教員。はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師