“謎多き”自律神経の基本を解説!そもそも自律神経って、何ですか?)
LEE (2024/08/2
わかっているようで、わかってない! そもそも自律神経って、何ですか?
目で見ることはできないし、スイッチングのタイミングも自覚できない……。“謎多き”自律神経、基本の「き」を解説。
- 教えてくれたのは
- ●姫野友美先生 TOMOMI HIMENO
心療内科・医学博士
ひめのともみクリニック(東京・品川)院長。日本薬科大学教授。
女性の立場に立った診療が多くの女性患者に支持される。『心療内科に行く前に食事を変えなさい』(青春出版社)ほか著書多数。
解説1:「攻」と「守」の役割で構成された神経で、生命を保つために機能しています
「自律神経は、内臓や血管などを自動的に調節する神経です。交感神経と副交感神経という2つの神経で構成され、脳から出て全身に張り巡らされています。これが血圧や心拍、汗腺、消化吸収、体温など生命維持のためのさまざまな機能を調節しているのです。緊張・興奮状態など『攻め』のときは交感神経が優位になって血圧が上昇、脈拍は速くなり、唾液は減り、胃腸の働きが抑制されます。反対に休息時など『守り』のときには副交感神経が優位になり、血圧が低下、胃腸の働きが活発に。2つの神経がシーソーのように、攻守を入れ替えながら働いています」(姫野友美先生)
解説2:正反対の役割を持つ2つの神経が、日中と夜間でバランスよく働くと体はいい状態
「昼間は交感神経が優位で体は活動モード、夜に近づくと副交感神経が優位になり休息モードに。一定のリズムで交互に入れ替わり、どちらも同じような強さで働くのが本来の状態です。自律神経は気候などの外的なものから心配事など内的なものまで、さまざまな要因に対して体を適応させるべく、めまぐるしくスイッチングしています。ただ、気候やストレスなどに体を適応させる頻度や度合いが激しいと、働きが追いつかなくなり、その結果、どちらか一方ばかりが強く働いたり、なかなか切り替わらない状態になったりするのです」(姫野友美先生)
解説3:ストレスや不規則な生活によってバランスが乱れると、疲れやだるさ、食欲低下などに
「ストレスや不規則な生活は自律神経の働きに大きな負担をかける要因です。忙しい現代人は交感神経優位の人が多いといわれ、休むべきときに休めず交感神経から副交感神経にスムーズに切り替えができない人が増えています。特に30代・40代のように忙しいと、その傾向が強いようです。交感神経ばかりが働いていると不眠や疲れ、動悸、肩こり・首こり、食欲低下などの症状が、副交感神経ばかり優位だとやる気の低下や倦怠感などの症状が現れます。これらがひどくなり日常生活に支障をきたすようになるのが『自律神経失調症』という病気です」(姫野友美先生)
もっと知りたい! 素朴なギモン:自律神経Q&A
生理や更年期とも似ているし、天候や加齢との関係も気になる……。100人隊から挙がった自律神経の「?」に姫野先生がズバッとアンサー。
- Q.体がしんどいので診察を受けたいけれど、何科を受診 すればいいですか?
- A.不調で不安になったら内科か心療内科へ
「めまいや動悸、胃腸の不調、不眠といった症状は基本的に内科でOK。それがストレスのせいかも、という場合は、ストレスによる体の症状を扱う心療内科がベター。受診の目安は、症状によって生活に支障をきたしたら、というのが一応のライン。でも不調の陰に大きな病気が隠れていることもあるので、不安を感じたらまず受診してみる、というのでいいと思います」(姫野友美先生)
- Q.天気が崩れそうになると頭痛やだるさが…。これも自律神経が原因?
- A.天候の変化で自律神経の働きが乱れる「気象病」です
「気象の変化で不調が現れるのが『気象病』。天候が変わる前、耳の中の『内耳』という部分にあるセンサーが気圧の変化を感じ取り、視床下部に伝達して自律神経を調節するのですが、そのセンサーが過剰に働いてしまうと自律神経の働きも乱れます。自律神経が乱れるとセンサーも乱れるという相互関係にあり、それが頭痛や倦怠感などとして現れます」(姫野友美先生)
- Q.自律神経の乱れと鉄分不足の症状が似ている気が。関連はありますか?
- A.鉄が足りないと自律神経がうまく働きません
「鉄が不足していると神経伝達物質の合成ができないため、自律神経の働きが悪くなり、疲れやだるさ、立ちくらみなど、貧血ととてもよく似た症状が現れます。女性は生理で多くの鉄を排出してしまうため、長期にわたって慢性的に鉄不足の状態。更年期症状に悩む方がホルモン補充療法をしてもなかなかよくならない場合、鉄不足が原因という場合も多いです」(姫野友美先生)
- Q.自律神経と女性ホルモンの働きは関係ありますか?
- A.視床下部を中心にして影響を及ぼし合っています
視床下部 卵巣 自律神経 女性ホルモンを分泌する指令 体の機能を調整する指令
「女性ホルモンの分泌を司るのは脳の視床下部。そこから下垂体を介して卵巣に指令が伝わり、女性ホルモンが分泌されます。視床下部は自律神経の中枢でもあるため、自律神経と女性ホルモンはお互いに影響を及ぼし合う関係です。更年期で女性ホルモンの量が減ると、視床下部は回復させようと奮闘しますが、うまく回復しないと視床下部が混乱し、それにより自律神経も乱れ、動悸などの症状が出ます」(姫野友美先生)
- Q.年を取るにつれて、体のだるさが顕著に。これは体力不足? それとも自律神経の乱れ?
- A.体力の低下もあるけれど自律神経の機能低下も
「肌や髪、筋肉などと同じで、神経の働きも年とともに衰えてきます。環境の変化やストレスに自律神経が対応しきれなくなり、若い頃に比べてだるさや疲れなどが出やすくなるとはいえるでしょう。ただ、シニア世代になって子どもが独立したり、仕事をリタイアするなどでストレスがなくなると、運動する時間もできて自律神経のバランスがよくなる人も多くいます」(姫野友美先生)
- Q.子どもでも自律神経が乱れることはありますか?
- A.成長期の子どもは自律神経が乱れやすい
「子どもの場合、血圧や心拍の調節がうまくいかず立ちくらみや動悸が起きる『起立性調節障害』として現れることが。特に小5~高校生くらいまでの成長期は要注意です。その時期は食べ物からとった栄養素が体の成長に優先的に使われ、自律神経の働きを維持するほうに回せなくなるため、たんぱく質やビタミンなど、栄養素をより多くとる必要があります」(姫野友美先生)
- Q.自律神経の乱れやすさに男女の性差は影響しますか?
- A.内的&外的な要因によって女性のほうが乱れやすい
「生理前にやたら眠くなるなど、女性ホルモンの変動によって自律神経も影響を受けるということはあります。そうした内的な要因に加えて、家事や育児など男性よりもタスクが多いという外的な要因もあるのが日本の女性の傾向。その分忙しさやストレスも多くなり、睡眠時間も削られてしまうため、結果として男性よりも女性のほうが自律神経を乱しやすいといえます」(姫野友美先生)
- Q.自律神経の乱れやすさは遺伝するものですか?
- A.遺伝はある、けれどそれがすべてではありません
「自律神経の細胞の中にあるミトコンドリアは母親の卵子からのみ受け継がれるため、母親の自律神経が乱れやすいと子どもも、という傾向はあります。また鉄欠乏など母親の栄養状態が生まれてくる赤ちゃんに影響することも。とはいえ、それがすべてを左右するわけではありません。自分の傾向を把握し、食事や運動、睡眠などのセルフケアで自律神経をいい状態に保つことは、誰でも可能です」(姫野友美先生)